発注者及び受注者間において守らなければならない建設業法をまとめています。
見積条件の提示違反にならないためには(建設業法第20条第4項、第20条の2)
見積の際に提示しなければならないことや、期間について教えてください。
工事を受注する人が知っておきたいことを最初に明示することでトラブルを防ぐのが目的です。
工事額の見積条件についてのガイドラインについて詳しく解説いたします。
なぜ見積条件を提示しなければならないか?
受注予定者が当該行為の見積りをするために必要な一定の期間を設け、契約の内容となるべき重要な事項を提示し見積落し等の問題が生じないようにするためです。
見積のポイント
①具体的内容であるか?②望ましくは書面で提示し作業内容を明確にすること③追加工事または変更工事に伴う変更契約等を行う際にも適正な見積もりが必要であるという点になります。
提示事項
提示事項は19条の請負契約書に記載することが義務付けられている事項になります。
また具体的でなければなりません。
必ず記載 |
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工事内容 |
工事着手の時期及び工事完成の時期 |
請負代金の全部または一部の前払金または出来形部分に対する支払の定めをするときはその支払いの時期および方法 |
当事者の一方から設計変更または工事着手の延期若しくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め |
天災その他の不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め |
価格の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 |
工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め |
注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときはその内容及び方法に関する定め |
注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときはその内容及び方法に関する定め |
注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡の時期 |
工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法 |
工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関するさだめをするときはその内容 |
各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 |
契約に関する紛争の解決方法 |
確定していない事項は確定していないと明示しましょう
発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければなりません。施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記事
項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第4項に違反します。
受注者に不利な情報は先んじて伝えておきます
また、建設業法第20条の2により、発注者は、当該建設工事に関し、① 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象② 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、受注予定者に対して、必要な情報(例えば、地盤に関するボーリング調査結果報告書、土壌汚染調査報告書、既存建物の建築図面、近隣住民との工事に関する協定書・要望書など、発注者が認識している情報)を提供しなければならない。発注者が把握しているにも関わらず必要な情報を提供しなかった場合、建設業法第20条第4項及び第20条の2に違反します。
見積期間はどれくらもてばいいか
予定価格 | 日数 |
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工事1件の予定価格500万円に満たない | 1日以上 |
工事1件の予定価格500万万円以上5,000万円に満たない | 10日以上 |
工事1件の予定価格5,000万円以上 | 15日以上 |
数え方
契約内容を提示した日を算入せず、次の日から数えてください。初日不算入と言います。
5月1日に契約内容を提示し、予定価格が500万円に満たない場合は、5月2日から数えて5月3日に以降に契約の締結を行ってください。
見積りについては理解できました。次の段階の請負契約において守らなければならないことはどんなことですか?
はい。では請負契約で守らなければならないことを以下で解説していきます。
請負契約締結違反にならないためのポイント
①書面であること
②必要記載事項を満たすこと
③契約締結後に工事に着手しなければならないこと
契約は工事着手前に
建設工事の請負契約は相互対等な立場で契約しなければならないと法律上は規定されています。
書面で契約をし、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません。
災害時等でやむを得ない場合以外は工事の着工前に行わなければなりません。
契約書面に記載する事項は何か
番号 | 具体的内容を提示しなければならない事項 |
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1号 | 工事内容 |
請負代金の金額 | |
3号 | 工事着手の時期及び工事完成の時期 |
令和2年改正 | 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときはその内容 |
4号 | 請負代金の全部または一部の前払金または出来形部分に対する支払の定めをするときはその支払いの時期及び方法 |
5号 | 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期若しくは工事の変更、請負代金の額の変更または損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め |
6号 | 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担及びその額の算定方法に関する定め |
7号 | 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 |
8号 | 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め |
9号 | 注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容および方法に関する定め |
10号 | 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡の時期 |
11号 | 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 |
12号 | 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 |
13号 | 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 |
14号 | 契約に関する紛争の解決方法 |
工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数が明らかである場合はその見積内容を考慮しなければなりません。また上記内容は電子契約でも可能です。
工期において守ること
適正な工期を確保するための基準である工期に関する基準を踏まえ対等な立場に基づき工期を決定してください。
また受注者の責めに帰すべき事由により、工期内に工事を完成することができない場合の違約金の額は過大な額にならないように設定してください。
著しく短い工期とされ建設業法違反となる例
①発注者が早期の引渡を受けるために一方的に通常よりもかなり短い期間を提示し請負契約を締結した場合
②受注予定者が工期を提示したにも関わらず、それよりも短い期間を工期とする請負契約を締結した場合
③受注者の責めに帰さない理由により、当初の請負契約において定めた工期を変更する際、当該変更後の工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を工期とする請負契約を締結した場合
工期はどのように考えればいいか
工期が適切かは以下の基準で審査されます。
①契約締結された工期が、「工期基準」で示された内容を踏まえていないために短くなり、それによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該建設工事を施工することとなっていないか
②契約締結された工期が、過去の同種類似工事の工期と比較して短い場合、工期が短くなることによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該建設工事を施工することとなっていないか
③契約締結された工期が、受注者が見積書で示した工期と比較して短い場合、工期が短くなることによって、受注者が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該建設工事を施工することとなっていないか
等を総合的に勘案したうえで、個別に判断されます。
これからは時間外労働は労働基準法で罰則の対象になります
また、建設業については、労働基準法上、いわゆる36協定で定める時間外労働の限度に関する基準(限度基準告示)の適用対象外とされていたが、第196回国会(常会)で成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下「働き方改革関連法」という。)による改正後の労働基準法において、労使協定を結ぶ場合でも上回ることのできない時間外労働の上限について法律に定めたうえで、違反について罰則を科すこととされ、令和6年4月1日から、建設業についても、この一般則(以下「時間外労働規制」という。)が適用されます。
合意があったとしても短い工期とされます
ついては、受注者は、時間外労働規制を遵守した適正な工期による見積りを提出するよう努め、発注者は、受注者から当該見積りが提出された場合には、内容を確認し尊重する必要があります。
なお、時間外労働規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は、例え、発注者と受注者との間で合意している場合であっても、「著しく短い工期」であると判断されます。
著しい短い工期違反は知事の勧告がされ従わないと公表されます
また、建設業法第19条の6において、国土交通大臣又は都道府県知事は、発注者が同法第19条の5の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができると規定しています。
工期に関しては変更契約の際も守らなければなりません
建設業法第19条の5により禁止される行為は、当初契約の締結に際して、著しく短い工期を設定することに限られず、契約締結後、受注者の責に帰さない理由により、当初の契約どおり工事が進行しなかったり、工事内容に変更が生じるなどにより、工期を変更する契約を締結する場合、変更後の工事において著しく短いことも禁止されます。
受注者の責めに帰さないとは受注者の責任ではないにも関わらずという意味です。
約款を記載して紛争防止に努めましょう
なお、工期の変更時に紛争が生じやすいため、紛争の未然防止の観点から、当初契約の締結の際、公共工事については公共約款第21条の規定(発注者は、工期の延長又は短縮を行うときは、この工事に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない。)、民間工事については民間工事標準請負契約約款(甲)第29条の規定(発注者は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。)を明記しておくことが重要である。
民間工事 | 公共工事 |
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民間工事標準請負契約約款(甲)第29条の規定(発注者は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。)を明記 | 公共約款第21条の規定(発注者は、工期の延長又は短縮を行うときは、この工事に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない |
契約書に文言を入れておくことが必要です。
不当に低い金額で請負契約を締結してはいけません
やむを得ず、通常の工期に比べて短い工期で契約する場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、短い工期で工事を完成させることを前提として算定してください。
発注者が、短い工期にもかかわらず、通常の工期を前提とした請負代金の額で請負契約を締結させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」を下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
受注者に過度な義務や負担を課す片務的な内容の契約を行わないためには
建設業法第18条においては、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定されています。建設工事の請負契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、公共工事については、中央建設業審議会が作成する公共工事標準請負契約約款(以下「公共約款」という。)に沿った契約が締結されています。民間工事においても、同審議会が作成する民間工事標準 請負契約約款又はこれに沿った内容の約款 以下「民間約款等」という。)に沿った内容の契約書による契約を締結することが望ましいです。
公共には公共の約款、民間には民間の約款があります。
受注者に過大な義務を課す契約は建設業法違反になります
※ 民間約款に沿った内容の約款として、民間(七会)連合協定工事請負契約約款がありますが、民間工事の中には、民間約款等を大幅に修正した契約が締結されており、その修正内容が受注者に過大な義務を課す等、次のような片務的な内容となっている場合があります。
片務的とは一方が義務を負っていることを言います。片方にだけ義務を課題に背負わせることは建設業法違反です。
① 発注者の責めに帰すべき事由により生じた損害についても、受注者に負担させること
② 工事の施工に伴い通常避けることができない騒音等の第三者への損害に ついても、受注者に負担させること
③ 例えば、民法(明治29年法律第89号)や住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)に定める期間を大幅に超えて、長期間の瑕疵担保期間を設けること
④ 過度なアフターサービス、例えば、経年劣化等に起因する不具合につい てのアフターサービスなどを受注者に負担させること
また、契約外の事項である次のような業務を発注者が求めることも片務的な行為に該当すると考えられる。
⑤ 販売促進への協力など、工事請負契約の内容にない業務を受注者に無償で求めること
⑥ 設計図書と工事現場の状況が異なっていた場合に、設計変更の作業を受 注者に無償で協力させること
このような、受注者に過度な義務や負担を課すなど、片務的な内容による契 約や契約外の行為をさせることは、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金による契約となる可能性がありますので注意してください。
解体工事の場合の請負契約書の注意点
一定規模の解体工事の場合には特別に記載しなければならない事項があります。一定規模とは
ア 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。) の床面積の合計が80平方メートル
イ 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、 当該工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が500平方メートル
ウ 建築物に係る新築工事等(上記イを除く)…その請負代金の額が1億円 エ 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が500万円
注 解体工事又は新築工事等を二以上の契約に分割して請け負う場合に おいては、これを一の契約で請け負ったものとみなして、上記の「一定規模」に関する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない。
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号) 第13条においては、一定規模(*)以上の解体工事等に係る契約を行う場合に、 以下の①から④までの4事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととされており、以下の4事項の記載を15項目に加えて必要となります。
契約15項目に加える条項4つ |
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① 分別解体等の方法 |
② 解体工事に要する費用 |
③ 再資源化等をするための施設の名称及び所在地 |
④ 再資源化等に要する費用 |
追加工事をする場合の追加・変更契約について(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①追加工事等が発生したが、発注者が書面による契約変更を行わなかった場合
②追加工事等について、工事に着手した後又は工事が終了した後に書面により契約
変更を行った場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には建設業法違反のおそれがあります。
追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが必要
建設業法第19条第2項では、請負契約の当事者は、追加工事等(工事の一 時中止に伴う中止期間中の工事現場の維持、工事体制の縮小及び工事の再開準 備を含む。)の発生により当初の請負契約書(以下「当初契約書」という。) に掲げる事項を変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっています。
これは、当初契約書において契約内容を明定しても、その後の変更契約が口約束で行われれ ば、当該変更契約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観点から も望ましくないためであり、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として 追加工事等の着工前に、契約変更を行うことが必要です。
発注者及び受注者が追加工事等に関する協議を円滑に行えるよう、建設工事の当初契約書において、建設業法第19条第1項第6号に掲げる事項(当事者の一方から設計変更等の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望ましいです。
なお、追加・変更契約を行うべき事由及びその方法については、公共約款、 民間約款等において規定しているほか、国土交通省等では、「工事請負契約における設計変更ガイドライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を参考に契約をしてください。
追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定 できない等の理由により、追加工事等の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、発注者は、以下の事項を記載した書面を追加工事等の着工前に受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続につい ては、追加工事等の内容が確定した時点で遅滞なく行う必要があります。
確定したら示す内容 |
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① 受注者に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容 |
② 当該追加工事等が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期 |
③ 追加工事等に係る契約単価の額 |
追加工事等に要する費用を受注者に一方的に負担させると建設業法違反です
追加・変更契約を行う場合には、追加工事等が発生した状況に応じ、当該追加工事等に係る費用について、発注者と受注者との間で十分協議を行い決定しなければなりません。発注者が、受注者に一方的に費用を負担させたことにより、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等の状況によって は、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当初契約で定めた工期を短縮し、又は延長せざるを得なくなり、また、これに伴って工事費用が増加したが、 発注者が受注者からの協議に応じず、書面による契約変更を行わなかった場合は、建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法第19条の3に違反するおそれがあります。
工期は、建設業法第19条第1項第3号により、建設工事の請負契約において定めなければならない項目となっている。建設工事の請負契約の当事者は、当初契約の締結に当たって適正な工期を設定すべきであり、また、受注者は工程管理を適正に行うなど、できる限り工期に変更が生じないよう努めるべきです。
しかし、工事現場の 状況により、やむを得ず工期を変更することが必要になる場合も多い。こうした場合 において、工期の変更に係る請負契約の締結に関しても、書面によることが必要です。
なお、工期の変更の原因となった工事の一時中止の期間中における現場維持、体制縮小又は再開準備に要する費用については、追加工事が発生した場合と同様に書面で契約変更等を行うことが必要です。
工期変更についても書面による契約変更が必要
建設工事の請負契約において、工期に係る変更をする場合には、建設業法第 19条第2項により、契約当事者である発注者及び受注者は、原則として工期変更に係る工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印 をして相互に交付しなければならない。
また、発注者及び受注者が工期変更に関する協議を円滑に行えるよう、当初 契約書において、建設業法第19条第1項第6号に掲げる事項(当事者の一方 から工事着手の延期等の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の 額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、 できる限り具体的に定めておくことが望ましい。
なお、工期に係る変更の方法については、公共約款、民間約款等において規 定しているほか、国土交通省等では、「工事請負契約における設計変更ガイド ライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を策定している。
不当に低い発注金額の禁止(建設業法第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受注者による見積額を大幅に下回る額で建設工事の請負契約を締結した場合
②発注者が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆して、受注者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、建設 工事の請負契約を締結した場合
③発注者が、請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させ た場合
④発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにも かかわらず、発注者が請負代金の増額に応じない場合
⑤発注者が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合
上記のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。
協議をすること、今後不利な取り扱いをするぞなどと嫌がらせをしないこと、増額にはきちんと応じること、一方的に減額しないことに注意してください。
また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどということがないように気を付けてください。
不当に低い請負代金での契約は違法です
建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」とは、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を受注者と締結することを禁止するものである。
発注者が、取引上の地位を不当に利用して、不当に低い請負代金による契約を強いた場合には、受注者が工事の施工方法、工程等について技術的に無理な手段、期間等の採用を強いられることとなり、手抜き工事、不良工事や公衆災害、労働災害等の発生につながる可能性もあります。
自己の取引上の地位の不当利用をしてはいけません
取引上優越的な地位にある発注者 が、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いること
建設業法第19条の3の「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取 引上優越的な地位にある発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済 的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいいます。
取引上の優越的な地位
取引上優越的な地位にある場合とは、受注者にとって発注者との取引の 継続が困難になることが受注者の事業経営上大きな支障を来すため、発注者が受注者にとって著しく不利益な要請を行っても、受注者がこれを受け入れざるを得ないような場合を言います。
取引上優越的な地位に当たるか否か については、受注者の発注者への取引依存度等の状況により判断されるこ ととなるため、例えば受注者にとって大口取引先に当たる発注者について は、取引上優越的な地位に該当する蓋然性が高いと考えられます。
地位の不当利用とは協議の内容で判断されます
発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫す るような取引等を強いたか否かについては、請負代金の額の決定に当たり 受注者と十分な協議が行われたかどうかといった対価の決定方法等により判断されるものであり、例えば受注者と十分な協議を行うことなく発注者 が価格を一方的に決定し、当該価格による取引を強要することは違法です。発注者・受注者間は法律上対等であることから必ず協議をして決定することにしましょう。
工事を施工するために一般的に必要と認められる価格で契約すること
建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」とは、当該工事の施 工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、一般管理費(利潤相当額は含まない。)の合計額)をいい、具体的には、受注者の実行予算や下 請先、資材業者等との取引状況、さらには当該施工区域における同種工事の請 負代金額の実例等により判断することとなります。
不当に低い請負代金の契約の禁止は変更契約においても必須です
建設業法第19条の3により禁止される行為は、当初の契約の締結に際して、 不当に低い請負代金を強いることに限られず、契約締結後、発注者が原価の上昇を伴うような工事内容や工期の変更をしたのに、それに見合った請負代金の増額を行わないことや、一方的に請負代金を減額したことにより原価を下回ることも含まれます。
追加工事等を受注者の負担により一方的に施工させたことにより、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために「通常必要と認められる 原価」に満たない金額とならないよう、適正な追加・変更契約を行いましょう。
原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金を締結しましょう(建設業法第19条第2項、第19条の3、第19条の5)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
原材料費、労務費、エネルギーコスト等(以下「原材料費等」という。)の高騰や資材不足など発 注者及び受注者双方の責めに帰さない理由により、施工に必要な費用の上昇、納期の遅延、工事全体の一時中止、前工程の遅れなどが発生しているにもかかわらず、追加費用の負担や工期について 発注者が受注者からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった場合
契約後に高騰した原価については協議をし変更契約をしない場合は建設業法違反になります。
原材料費等の高騰や納期遅延が発生している状況においては、取引価格を反映してください
原材料費等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や納期の実態を踏まえた 適正な工期の確保のため、請負契約の締結に当たっては、公共工事標準請負契約約款第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)(いわゆるスライド条項)及び第22条(受注者の請求による工期の延長)又は民間建設工事標準請負契約約款(甲)第31条(請負代金額の変更)及び第30条(工事又は工期の変更等)(電力・ガス、鉄道等の民間企業の工事の請負契約においては公共工事標準請負契約約款を使用)を適切に設定・運用するとともに、契約締結後においても受注者から協議の申出があった場合には発注者が適切に協議に応じること等により、状況に応じた必要な契約変更を実施するなど、適切な対応を図る必要があります。
物価が高騰した場合、契約締結時以降に変更があった場合は協議に応じてください。またその協議に応じますよという約束事をスライド条項といいます。契約書にスライド条項を入れることが必要です。
元請下請間においても物価が高騰した場合には価格に上乗せしてください
なお、発注者・受注者間におけるこれらの対応は、元請負人・下請負人間の適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保に当たっても重要であること、下請中小企業 振興法(昭和45年法律第145号)に基づく振興基準(令和6年3月25日、以 下「振興基準」という。)において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等が増加した場合には、親事業者は、予め定めた価格改定タイミングはもちろんのこと、 その期中においても価格変更を柔軟に行うものとするとされているほか、特に原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すものとするとされていることについても留意しなければなりません。
発注者が受注者との協議や変更契約に応じない場合は「不当に低い請負代金の禁止」や「著しく短い工期の禁止」に違反するおそれがあります
協議や変更契約に応じない場合は、まず不当な金額で請け負っていることになります。また原材料が高騰しているにも関わらず納期が遅れることにより、工期までに間に合わない場合は著しく短い工期の禁止規定に違反することになります。
建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)により禁止される行為は、当初契約の締結に際して不当に低い請負代金を強制することに限られず、契約締結後 に原材料費等が高騰したにもかかわらず、それに見合った請負代金の増額を行わな いことも含まれる。
このため、原材料費等が高騰している状況において、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者側からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった 結果、請負代金の額がその建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満 たない金額となっている場合には、同条に違反するおそれがある。
また、建設業法第19条の5(著しく短い工期の禁止)により禁止される行為は、 当初契約の締結に際して著しく短い工期を設定することに限られず、契約締結後、原材料等の納期の遅延など受注者の責めに帰さない理由により、当初の契約どおり工事 が進行しない場合等において必要な工期の変更を行わないことも含まれる。
このため、資材不足等により納期遅延が発生している状況において、その工期が、 注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間となっている場合には、同条に違反するおそれがあります。
官公庁から勧告処分や公表されるおそれもあります
なお、建設業法第19条の6において、国土交通大臣又は都道府県知事は、発注者 が同法第19条の3又は第19条の5の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができると規定しています。
原材料が高騰しているにも関わらず価格を変更しない場合は独占禁止法に違反します
公正取引委員会は、令和5年3月1日「令和5年中小事業者等取引公正化推進アク ションプラン」の第3独占禁止法及び下請法の考え方の周知徹底の項目において、 法律上問題となり得る取引価格の据え置きに関する考え方が示されている。
公正取引委員会は、令和4年1月26日、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達第18号。以下「下請法運用基準」 という。)を改正するとともに、同年2月16日、公正取引委員会のウェブサイトに 掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ&Aに、下記の①及び② の2つの行為がこれに該当しますということを公表しました。
① 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
多くの場合、発注者のほうが取引上の立場が強く、受注者からはコスト上昇が生じても価格転嫁を言い出しにくい状況にあることを踏まえ、積極的に発注者からそのような協議の場を設けることが円滑な価格転嫁を進める観点から有効かつ適切であることから、明示的に協議を行わないことを、独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがある行為としてあげています。
② 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格 を据え置くこと
②に該当する行為については、受注者からコスト上昇を踏まえた取引価格引上げの要請があったにもかかわらず、受け入れない場合には、その理由については書面等の形に残る方法で伝えることが円滑な価格転嫁を進める上で は有効かつ適切であることから、書面等による回答を行わないことを、
それぞれ独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがある 行為として挙げていることについても気を付けてください。
価格が上昇したら協議をすること、受け入れられない場合は書面で相手に伝えること。
指値発注違反(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第4項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者と協議を行うことなく、一方的に請負代金の額を決定し、その額で請負契約を締結した場合
②発注者が、合理的根拠がないにもかかわらず、受注者の見積額を著しく下回る額で請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した場合
③発注者が複数の建設業者から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に請負代金の額として決定し、当該見積の提出者以外の者とその額で請負契約を締結した場合
④発注者が、免税事業者の受注者に対して、消費税相当額を含まない契約単価を一 方的に提示し、受注者と協議を行うことなく、当該単価により積算した額で請負契約を締結した場合
【建設業法上違反となる行為事例】
⑤発注者と受注者の間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、受注者に工事に着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に発注者が受注者との協議に応じることなく請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した場合
⑥発注者が、受注者が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を受注者に提示し、請負契約締結の判断をその場で行わせ、その額で請負契約を締結した場合
上記①から⑥のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。(指値)また、⑤のケースは同法第19条第1項に違反し(書面の契約)、⑥のケースは同法第20条 第4項に違反します。
一方的に請負契約の価格を立場を利用して決めてしまうことを禁止しています。
指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせず、又は受注者との協議に応じることなく、発注者が一方的に決めた請負代金の額を 受注者に提示(指値)し、その額で受注者に契約を締結させることをいう。指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意 に基づいて公正な契約を締結する。)を没却するものです。
公共工事においては、入札公告などから入札期日の前日まで一定の期間を設け、また、発注者が積算した予定価格の範囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一 般的であり、当初契約時においては、①から⑥までのようなケースは生じにくいものと考える。しかし、発注者は、歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした 予定価格による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるようなことは、厳に慎む必要があります。
また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、建設業法第19条の3違反とならないよう留意が必要です。
指値発注は建設業法に違反するおそれがあります
指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えられ、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第 19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて短い工期である場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、発注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきです。発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工期で 工事を完成させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」を 下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく回答を求める行為については、建設業法第20条 第4項の見積りを行うための期間確保違反となります。
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、この ことにより契約書面の取り交わしが行われていない段階で、発注者が受注者に 対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的 に決定する行為は、書面による契約の締結違反になります。
請負代金決定に当たっては、十分に協議を行うことが必要
建設工事の請負契約の締結に当たり、発注者が契約希望額を提示した場合に は、自らが提示した額の積算根拠を明らかにして受注者と十分に協議を行うな ど、一方的な指値発注により請負契約を締結することがないよう留意すべきです。
不当な使用資材等の購入強制違反(建設業法第19条の4)
一方的に請負契約上の立場を利用してここの資材を購入しなさいということを禁止しています。請負契約は法律上は対等であることは上記で述べたとおりですね。契約締結後に受注者の経済的に不当に圧迫することは建設業法違反になります。
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①請負契約の締結後に、発注者が受注者に対して、工事に使用する資材又は機械器具等を指定し、あるいはその購入先を指定した結果、受注者が予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった場合
②請負契約の締結後、当該契約に基づかないで発注者が指定した資材等を購入させたことにより、受注者が既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった 販売店との取引関係が悪化した場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条の4に違反するおそれがあります。
「不当な使用資材等の購入強制」の定義
建設業法第19条の4で禁止される「不当な使用資材等の購入強制」とは、 請負契約の締結後に、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、受注者に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを受注者 に購入させて、その利益を害することである。
請負契約の締結後の行為が規制の対象
「不当な使用資材等の購入強制」が禁止されるのは、請負契約の締結後にお ける行為に限られる。これは、発注者の希望するものを作るのが建設工事の請負契約であり、請負契約の締結に当たって、発注者が、自己の希望する資材等 やその購入先を指定することは、当然想定し得ます。発注者が請負契約締結前に これを行ったとしても、受注者はそれに従って適正な見積り行い、適正な請 負代金で契約を締結することができるため、建設業法第19条の4の規定の対象とはなりません。指定されたとしても、その資材の金額を考慮にいれて見積が出せるからです。
「自己の取引上の地位の不当利用」
「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある 発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するよう な取引等を強いることをいう
「資材等又はこれらの購入先の指定」とは、商品名又は販売会社を指定すること
「使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを購入させる」とは、発注者が工事の使用資材等について具体的に○○会社○○型とい うように会社名、商品名等を指定する場合又は購入先となる販売会社等を指定する場合をいう。
受注者の「利益を害する」とは、金銭面及び信用面において損害を与えること
受注者の「利益を害する」とは、資材等を指定して購入させた結果、受注者 が予定していた資材等の購入価格より高い価格で購入せざるを得なかった場 合、あるいは、既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり、金銭面及 び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販 売店との取引関係が極度に悪化した場合等をいう。
したがって、発注者が指定した資材等の価格の方が受注者が予定していた購入価格より安く、かつ、発注者の指定により資材の返却等の問題が生じない場 合には、受注者の利益は害されたことにはなりません。
発注者は資材等の指定を行う場合には、見積条件として提示することが必要
使用資材等について購入先等の指定を行う場合には、発注者は、あらかじめ 見積条件としてそれらの項目を提示する必要があります。
やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
立場上弱い受注者にやり直しの工事を負担させることを建設業法では禁止しています。またやり直し工事の事前に変更契約を結ぶことが必要です。やり直し工事の際の金額が不当に低い場合は不当に低い原価での締結となり建設業法違反になります。
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
発注者が、受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、やり直し工事を行わせ、必要な変更契約を締結せずにその費用を一方的に受注者に負担させた場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項、第19条の3に違反するおそれがあります。
やり直し工事を受注者に依頼する場合は、発注者と受注者が帰責事由や費用負担について十分協議することが必要
発注者と受注者は、工事の施工に関し十分な協議を行い、工事のやり直し(手戻り)が発生しないよう努めることはもちろんであるが、発注者の指示や要求により、やむを得ず、工事の施工途中又は施工後において、やり直し工事が発 生する場合があります。やり直し工事が発生した場合には、発注者が受注者に対し て一方的に費用を負担させることなく、発注者と受注者とが帰責事由や費用負担について十分協議することが必要である。
受注者の責めに帰さないやり直し工事を依頼する場合は、契約変更が必要
受注者の責めに帰すべき事由がないのに、工事の施工途中又は施工後におい て、発注者が受注者に対して工事のやり直しを依頼する場合にあっては、発注者は速やかに受注者と十分に協議した上で契約変更を行う必要があり、発注者 がこのような契約変更を行わず、当該やり直し工事を受注者に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違反する(13ページ「2-2 追加工事等 に伴う追加・変更契約」参照)。
やり直し工事の費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ
発注者の責めに帰すべき事由によりやり直し工事が必要になった場合に、発注者がやり直し工事に係る費用を一方的に受注者に負担させることによって、 請負代金の額が当初契約工事及びやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となるときには、発注者と受注者との間の取引依存度等の状況によっては、 建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
受注者の責めに帰すべき事由がある場合とは、施工内容が契約書面に明示された内容と異なる場合や施工に瑕疵等がある場合
やり直し工事は受注者の失敗等でやり直すことですが、ある一定の要件がそろうと発注者の責任となることがあります。施工内容を明確にしてほしいと受注者から依頼があったにも関わらずそれに応じない、もしくは発注者の指示内容が工事内容とは異なった場合などです。この場合は受注者の責任とはいいがたいですよね。ですのでやり直し工事をすることを強要されることは建設業法違反であるということになります。
受注者の責めに帰すべき事由があるため、受注者に全ての費用を負担させ、 工事のやり直しを求めることができるケースとしては、施工が契約書面に明示された内容と異なる場合や施工に瑕疵等がある場合などが考えられます。
次のような場合には、施工が契約書面と異なり、又は瑕疵等があるとは認められず、発注者の責めに帰すべき事由がある場合に該当します。つまり発注者の責任ですということになります。
ア 受注者から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、 発注者が正当な理由なく明確にせず、受注者に継続して作業を行わせたことにより、施工が発注者の意図と異なることとなった場合
イ 発注者の指示、あるいは了承した施工内容に基づき施工した場合におい て、工事の内容が契約内容と異なる場合
なお、天災等により工事目的物が滅失し、工事の手戻り等が生じる場合があるが、発注者及び受注者の双方の責めに帰すことができない不可抗力による損害の負担者については、民間約款等において、協議により重大と認めるものは 発注者がこれを負担すると規定されている。
天災という不可抗力が起きた場合に生じた損害については約款を結んでいる場合、重大と認めるものは発注者が損害を補填するものであるということです。
支払違反について(建設業法第24条の3第2項、第24条の6)
【望ましくない行為事例】
①請負契約に基づく工事目的物が完成し、引渡し終了後、発注者が受注者に対し、 速やかに請負代金を支払わない場合
②発注者が、請負代金支払の大部分を手形払いで行った場合
③発注者が、手形期間の長い手形により請負代金の支払を行った場合
上記①から③のケースは、いずれも発注者が受注者による建設業法第24条の6 違反の行為を誘発するおそれがあります。
請負代金の支払時の留意事項
請負代金については、発注者と受注者の合意により交わされた請負契約に基 づいて適正に支払われなければならない。請負代金の支払方法については、原則として当事者間の取り決めにより自由に定めることができるが、本来は工事目的物の引渡しと請負代金の支払は同時履行の関係に立つものであり、民間約款等においても、その旨が規定されています。また、発注者から受注者への支払 は、元請下請間の支払に大きな影響を及ぼすことから、少なくとも引渡し終了後できるだけ速やかに適正な支払を行うように定めることが求められる。
更に、実際には、特に長期工事の場合等、工事完成まで支払がなされないと、 受注者及び下請負人の工事に必要な資金が不足するおそれがあるため、振興基準において、建設など見積り及び発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、親事業者は、前払い比率及び期中払い比率をできる限り高めるよ う努めることとされていることも踏まえ、発注者からの支払いにおいても、民間工事標準請負契約約款の規定に沿って前払金制度あるいは部分払制度(いわ ゆる出来高払制度)を活用するなど、迅速かつ適正な支払を行うことが望ましいです。
請負契約において工事が終了したあとの完成物を引き渡すことと支払は同時履行という意味は、支払をしなければ引き渡しません、引き渡さなければ支払はしませんということを両者が主張できるということです。工事が長期に渡る場合は、終了してから全額を支払うとなるとその間のキャッシュが枯渇してしまうことになりかねませんので、前払い、部分的に支払いをする必要があります。
目的物の引渡しを受けた場合には、できるだけ速やかに支払を行うこと
工事が終了したら速やかに支払うこと。特定建設業者は50日以内に支払うことが義務付けられています。
発注者は、請負契約に基づく目的物の引渡しを受けた場合、受注者に対し、 請負契約において取り決められた請負代金の額を、できるだけ速やかに支払うことが望ましいです。
建設業法第24条の6では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金 4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請契約における下請代金の支払期日は、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内と規定しています。
これは、発注者から受注者に工事代金の支払があるか否かにかか わらず適用される規定であるが、発注者の支払期日によっては建設業法に定め た元請下請間の支払に実質的な影響を与えかねないことから、発注者は、これ らの元請下請間の下請代金の支払に関する規定も考慮し、できるだけ速やかに 支払を行うことが望ましい。
国が発注する公共工事においては、政府契約の支払遅延防止等に関する法律 (昭和24年法律第256号)に、検査、支払の時期が規定されており、同法に従って支払が行われている。国以外の公共発注者においても、それぞれが定めた検査や支払についての規則に従って行われているが、受注者からの工事完了の通知の速やかな受理や検査の適切な実施を含め、迅速な支払の確保に努めるべきである。
請負代金を手形で支払う場合の留意事項
労務費は必ず現金で支払ってください。特定建設業者様は手形機関が120日を超える長期手形を交付してはいけません。
建設業法第24条の3第2項では、元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとされている。
また、建設業法第24条の6第3項では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請代金の支払 に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる 手形(例えば、手形期間が120日超の長期手形)を交付してはならないとさ れている。
発注者から受注者への支払方法は、元請下請間の支払に実質的な影響を与え かねないことから、発注者は、上記の趣旨を踏まえ、受注者に対する請負代金 の支払は、できる限り現金によることが望ましく、手形で支払う場合にも、同 条の趣旨を踏まえ、長期手形を交付することがないようにすることが望ましい。
また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の趣旨に鑑み、下請代金の支払に係る考え方を改めて整理した、「下請代金の支払手段について」
(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号。以下「手形通達」という。)において、次のとおり下請取引の適正化に努めるよう要請されているため、「建設業法令遵守ガイドライン」(令和4年8月)において、 元請負人はこの点についても留意しなければならないとされていることについ ても併せて留意することが望ましいです。
<参考>
〇下請代金の支払手段について(令和3年3月31日20210322中庁第 2号・公取企第25号)
支払はできる限り現金、手形は60日以内、約束手形は廃止へということが以下に記載してあります。
親事業者による下請代金の支払については、以下によるものとする。
1 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること。
2 手形等により下請代金を支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを 勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定するこ と。当該協議を行う際、親事業者と下請事業者の双方が、手形等の現金化に かかる割引料等のコストについて具体的に検討できるように、親事業者は、 支払期日に現金により支払う場合の下請代金の額並びに支払期日に手形等 により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料 等のコストを示すこと。※
3 下請代金の支払に係る手形等のサイトについては、60日以内とするこ と。
4 前記1から3までの要請内容については、新型コロナウイルス感染症による現下の経済状況を踏まえつつ、おおむね3年以内を目途として、可能な限り速やかに実施すること。
※ 割引料等のコストについては、実際に下請事業者が近時に割引をした場 合の割引料等の実績等を聞くなどにより把握する方法が考えられる。
併せて、手形通達によって要請されている取組に加えて、振興基準において、 約束手形をできる限り利用しないよう努めること及びサプライチェーン全体で 約束手形の利用の廃止等に向けた取組を進めることとされていること、「手形等のサイトの短縮について」(令和4年2月16日20211206中庁第1 号・公取企第131号)において、公正取引委員会及び中小企業庁が、おおむ ね令和6年までに、60日を超えるサイトの約束手形、一括決済方式及び電子 記録債権を、下請代金支払遅延等防止法上「割引困難な手形」等に該当するお それがあるものとして指導の対象とすることを前提として、同法の運用の見直 しの検討を行うこととしていること、「新しい資本主義のグランドデザイン及 び実行計画フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)」において令和8年 の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進する旨閣議決定されていること、 金融業界に対し、令和8年に手形交換所における約束手形の取扱いを廃止する ことの可否について検討するよう要請されていること等を踏まえ、建設業界に おいても、発注者も含めて関係者全体で、約束手形の利用の廃止等に向けて、
前金払等の充実、振込払い及び電子記録債権への移行、支払サイトの短縮等の取組を進めていくよう努めることが重要であることについても留意しなければならない。
独占禁止法との関係について
独占禁止法において違反とされることは不公正な取引であるということです。上記で説明をした建設業法違反は独占禁止法においても違反であるということが以下に書いてあります。
不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制については、建設業法第 19条の3及び第19条の4でこれを禁止しているが、これらの規定に違反する上記行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年 法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条で禁止している不公正な取引方法の一類型である優越的な地位の濫用にも該当するおそれがある。優越的地位の濫用に関して、公正取引委員会は、平成22年11月30日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」という。) を示している。
この「考え方」のうち、本ガイドラインと関係のある主な部分は以下のとお りである。
① 「1.見積条件の提示等」、「2-1 当初契約」、「2-2 追加工事 等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期変更に伴う変更契約」、「4. 不当に低い発注金額」及び「5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況にお ける適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保」に関しては、「考え方」 第4の2(3)に掲げる「その他経済上の利益の提供の要請」、第4の3(4) に掲げる「減額」及び第4の3(5)に掲げる「その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等」
② 「6.指値発注」に関しては、「考え方」第4の3(5)アに掲げる「取引の対価の一方的決定」
③ 「7.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、「考え方」第4の1に 掲げる「購入・利用強制」
④ 「8.やり直し工事」に関しては、「考え方」第4の3(5)イに掲げ る「やり直しの要請」
⑤ 「9.支払」に関しては、「考え方」第4の3(3)に掲げる「支払遅延」
なお、発注者が独占禁止法第2条第1項に規定する事業者でない場合(公的発注機関の場合)には、建設業法第19条の6第1項において、国土交通大臣 又は都道府県知事は、当該発注者が同法第19条の3(不当に低い請負代金の 禁止)又は第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)の規定に違反 している事実があり、特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると規定している。
社会保険・労働保険(法定福利費)等について
社会保険とは健康保険、厚生年金のことをいいます。労働保険とは雇用保険、労災保険のおとを言います。これらは法定福利費といい必ず加入が必要なものであるため、工事の必要な経費とされます。これを掛けずに工事をした場合、通常必要とされる原価にいれないため建設業法違反となります。中小企業退職金共済法の規定に基づく建設業退職金共済制度の加入事業者である場合、公共工事、民間工事の別を問わず、その雇用する者すべてに対して賃金を支払う都度、納付しなければならない建退共掛金についてもかけないで請負契約を締結した場合は建設業法違反となります。
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度であり、強制加入の方式がとられている。
具体的には、健康保険と厚生年金保険については、法人の場合にはすべての事 業所について、個人経営の場合でも常時5人以上の従業員を使用する限り、必ず 加入手続を行わなければならず、また、雇用保険については、建設事業主の場合、 個人経営か法人かにかかわらず、労働者を1人でも雇用する限り、必ず加入手続をとらなければならない。
このため、受注者には、これらの保険料に係る費用負担が不可避となっている。 これらの保険料にかかる受注者の費用は、労災保険料とともに受注者が義務的に負担しなければならない法定福利費であり、建設業法第19条の3に規定する 「通常必要と認められる原価」に含まれるべきものである。
このため、発注者及び受注者は見積時から法定福利費を必要経費として適正に考慮すべきであり、法定福利費相当額を含まない金額で建設工事の請負契約を締 結した場合には、発注者がこれらの保険への加入義務を定めた法令の違反を誘発 するおそれがあるとともに、発注者が建設業法第19条の3に違反するおそれが ある。
また、受注者が、中小企業退職金共済法の規定に基づく建設業退職金共済制度 の加入事業者である場合、公共工事、民間工事の別を問わず、その雇用する者すべてに対して賃金を支払う都度、納付しなければならない建退共掛金について も、工事の施工に直接従事する建設労働者に係る必要経費であり、建設業法第1 9条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであるため、 上記の法定福利費と同様に、適正に確保することが必要である。
建設工事で発生する建設副産物について
土砂、コンクリート塊等の再生資源や産業廃棄物は受注者が責任を持って処理することになっています。建設現場から発生する建設副産物を他工事や再資源化施設、処分場等に 運搬するための経費や、その処理に要する経費は、建設業者が義務的に負担しなければ ならない費用であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」 に含まれるものにいれてください。
建設現場では、土砂、コンクリート塊等の再生資源や産業廃棄物(以下これらを 「建設副産物」と総称する。)が発生する。建設現場で発生した廃棄物混じりの土砂等は、建設現場等で土砂等と廃棄物に分別することが必要であり、分別された廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき適正な処理を行うことが必要である。
廃棄物処理法では、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないと規定されており、建設工事では原則として、発注者から直接建設工事を請け負った受注者が適切な処理を行う排出事業者としての義務を遵守する必要がある。
また、廃棄物が混じっていない土砂等(廃棄物と分別後のものを含む。)は、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づき、発注者から直接建設工事を請け負った受注者のもと、他工事での利用など、再生資源としての利用を促進する必要がある。
したがって、建設現場から発生する建設副産物を他工事や再資源化施設、処分場等に 運搬するための経費や、その処理に要する経費は、建設業者が義務的に負担しなければ ならない費用であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」 に含まれるものであることに留意が必要である。
受注者は、下請負人から提示された見積書の内容も踏まえ、建設副産物の適正処理に 要する経費を適正に見積り、発注者に交付する見積書に明示すべきである。
発注者は、受注者から交付された建設副産物の適正処理に要する経費が明示された見 積書を尊重しつつ、建設業法第18条を踏まえ、対等な立場で受注者との契約交渉をしなければならない。
なお、受注者の見積書に建設副産物の処理に要する経費が明示されているにもかかわ らず、発注者がこれを尊重せず、当該経費相当額を一方的に削減したり、当該経費相当 額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、 建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
建設副産物の処理等に要する経費について、契約締結後の状況により予期せぬ変更が生じた場合においても通常必要と認められる原価になりますので受注者に負担させることがないようにしましょう。
また、建設副産物の処理等に要する経費について、契約締結後の状況により予期せぬ変更が生じた場合にも、発注者と受注者が協議の上、適切に変更契約を行い請負代金に反映することが必要である。追加的に発生した建設副産物の処理等に要する費用を受注者に負担させ、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合にも、 受注者の当該発注者への取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
下請中小企業振興法・振興基準との関係について
下請法よりも下請中小企業振興法の方が取引の範囲が広く全ての取引が対象となっています。
下請中小企業振興法(昭和45年法律第145号。経済産業省、業所管省庁共管。以下「下請振興法」という。)は、下請中小企業を育成・振興する支援法としての性格を有 する法律であり、広く下請振興を図る観点から、建設工事の請負が適用されない下請法 よりも、対象となる取引の範囲が広く、全ての取引が対象となっている。
また、下請振興法第3条第1項に基づく振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、 下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準で、親事業者と下請事業者の望ましい、 あるべき取引の姿を示し、また、主務大臣(事業を所管する大臣)が必要に応じて下請事業者及び親事業者に対して指導、助言を行う際に用いられている。
下請振興法では、「親事業者」を、資本金等が自己より小さい中小企業者に対し、製造委託等をすることを業として行うものと定義し、親事業者の取引の相手方を指す「下請事業者」を、資本金等が自己より大きいものから委託を受けて、製造委託等をすること を業として行う中小企業者と定義している。
建設工事における親事業者は、建設工事の請負契約の発注者、元請負人が該当し、下請事業者とは、建設工事の請負契約の元請負人、下請負人が該当し、さらに、建設業者 が請け負った建設工事に使用する建設資材の製造を委託する場合や設計図等の作成を委託する場合なども該当する。
したがって、建設工事の請負契約の発注者・受注者間、元請・下請間だけでなく、建設工事に関係する、資材業者、建設機械又は仮設機材の賃貸業者、警備業者、運送事業者及び建設関連業者等との取引においても、特に振興基準に示す下記事項について配慮 を徹底し、下請中小企業を含むサプライチェーン全体で付加価値向上を目指すことができるような、親事業者と下請事業者の相互理解と信頼によって支えられる互恵的な取引 関係を構築していく必要がある。