本ブログは詳細に情報をお届けしておりますが、忙しい皆様のために、最も重要なポイントを「質問形式」でまとめています。この質問部分だけをご覧いただくことで、難しい法律のエッセンスを手軽に理解していただけます。お時間のない方、内容を簡単に振り返りたい方は、ぜひそちらをご覧になって詳しく知りたい部分は丁寧にお読みいただけると幸いです。
工期が法律違反になっていないか心配です。
工期については建設業法、労働基準法、労働安全衛生法の規定を守りながら工期を決定してください。これらの法律については以下に詳しくまとめます。
建設工事の請負契約及び工期に関する考え方
工期を守るに当たって基本的に守らなければならないこととは何でしょうか?
適正な工期を守るためには、書面で請負契約を締結すること、著しく短い工期を設定しないこと。仮に従わない場合は勧告処分があり会社名を公表されることになります。気を付けましょう。
基礎知識
建設工事の請負契約については、建設業法第 18 条、第 19 条等において、受発注者や 元請負人と下請負人が対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実に履行しなければならないことや、工事内容や請負代金の額、工期等につい て書面に記載すること、不当に低い請負代金の禁止、著しく短い工期の禁止などのルールが定められている。
・請負契約における書面の記載事項の追加(第 19 条):建設工事の請負契約の当事者 が請負契約の締結に際して工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容を書面に記載しなければならない。
・著しく短い工期の禁止(第 19 条の5、第 19 条の6):注文者は、その注文した建 設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期 とする請負契約を締結してはならない。また、建設業者と請負契約(請負代金の額 が政令で定める金額以上であるものに限る。)を締結した発注者がこの規定に違反し た場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣等は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、国土交通大臣等 は、この勧告を受けた発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表すること ができる。国土交通大臣等は、勧告を行うため必要があると認めるときは、当該発注者に対して、報告又は資料の提出を求めることができる。
・建設工事の見積り等(第 20 条):建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際 して、工事内容に応じ、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らか にして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。(※)費用の見積りだけでなく日数も見積りをする。
・工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供(第 20 条の2):建設工事の注文者 は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、 請負契約を締結するまでに、建設業者に対して、その旨及び当該事象の状況の把握 のため必要な情報を提供しなければならない。
・工期に関する基準の作成(第 34 条):中央建設業審議会は、建設工事の工期に関す る基準を作成し、その実施を勧告することができる。
守らなければならない法律は理解できました。契約書はどのような点に注意が必要ですか?
建設工事の標準約款があるのでそれをひな形として請負契約を締結することが望ましいです。また労働基準法における時間外労働が禁止されていることにも注意が必要です。原則として月 45 時間(限度時間)、年 360 時間以内であり、臨時的な特別の事情がある場合でも年 720 時間、単月 100 時間未満(休日労働含む)、複数月平均 80 時間以内(休日労働含む)、かつ、限度時間を超えて時間外労働を延長できるの は年6回までと定められています。
加えて、請負契約の「片務性」の是正と契約関係の明確化、適正化のため、建設業法 第 34 条に基づき、中央建設業審議会が、公正な立場から、請負契約の当事者間の具体的 な権利義務関係の内容を律するものとして決定し、当事者にその採用を勧告する建設工事の標準請負契約約款である公共工事標準請負契約約款や民間工事標準請負契約約款等 に沿った請負契約の締結が望まれる。
また、労働安全衛生法第3条においても、仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、 工期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を附さないよう に配慮しなければならないこととされている。
さらに、労働基準法第 32 条においては、1週 40 時間、1日8時間を超えて労働させてはならないこととされており、これを超えて働く場合(時間外労働)についても、同 法第 36 条において、原則として月 45 時間(限度時間)、年 360 時間以内であり、臨時的な特別の事情がある場合でも年 720 時間、単月 100 時間未満(休日労働含む)、複数月平均 80 時間以内(休日労働含む)、かつ、限度時間を超えて時間外労働を延長できるの は年6回までと定められている。
双方ともに協議をし人員、天候等を考慮にいれて工期を決定する
工期を設定するにあたりどのような要件を考慮に入れればいいですか?
十分な協議や質問回答の機会、調整 時間を設け、時間外労働規制の遵守を前提とした適切な人員や工程ごとの工期、天候、 地盤等の諸条件や施工上の制約等、基準を踏まえて検討された適正な工期を設定すること。元請負人の責に帰すべきもの、下請負人の責に帰すべきも の、不可抗力のように元請負人及び下請負人の責に帰すことができないものがあり、双 方対等な立場で遅延の理由を明らかにしつつ、元下間で協議・合意のうえ、必要に応じ て工期を延長してください。
受発注者間(※)及び元下間においては、これら法令等の規定を遵守し、双方対等な立場に立って、工期を定めようとする期間を通じて、十分な協議や質問回答の機会、調整 時間を設け、時間外労働規制の遵守を前提とした適切な人員や工程ごとの工期、天候、 地盤等の諸条件や施工上の制約等、基準を踏まえて検討された適正な工期を設定すると ともに、本基準を踏まえた適正な工期設定を含む契約内容について十分に理解・合意したうえで工事請負契約を締結するのが基本原則であり、このことは、当初契約だけでな く、変更契約についても同様である。
なお、前工程で工程遅延が発生し、適正な工期を 確保できなくなった場合は、元請負人の責に帰すべきもの、下請負人の責に帰すべきも の、不可抗力のように元請負人及び下請負人の責に帰すことができないものがあり、双 方対等な立場で遅延の理由を明らかにしつつ、元下間で協議・合意のうえ、必要に応じ て工期を延長するほか、必要となる請負代金の額(リース料の延長費用、前工程の遅延 によって後工程が短期間施工となる場合に必要となる人件費、施工機械の損料等の掛かり増し経費等)の変更等を行う。
公共工事の工期の定め方
公共工事の工期はどのような決め方があるのですか?
・発注者が工事の始期を指定する方式(発注者指定方式)
・発注者が示した工事着手期限までの間で受注者が工事の始期を選択する方式(任意着手方式)
・発注者が予め設定した全体工期の内で受注者が工事の始期と終期を決定する方式 (フレックス方式)
があり、余裕期間制度の活用に当たっては、地域の実情や他の工事の進捗状況等を踏 まえて、適切な方式を選択することとされている。
公共工事は、現在及び将来における国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整 備するものとして重要な意義を有しているため、建設業法に加え、公共工事の品質確保の促進に関する法律(以下「公共工事品質確保法」という。)や公共工事の入札及び契約 の適正化の促進に関する法律(以下「入札契約適正化法」という。)において公共工事独 自のルールが定められている。
請負契約の締結について
公共工事においては、公共工事品質確保法第3条第8項に基づき、その品質を確保 するうえで、公共工事の受注者のみならず、下請負人及びこれらの者に使用される技術者、技能労働者等がそれぞれ重要な役割を果たすことに鑑み、公共工事等における 請負契約の当事者が、各々の対等な立場における合意に基づいて、市場における労務 の取引価格、健康保険法等の定めるところにより事業主が納付義務を負う保険料等を 的確に反映した適正な額の請負代金及び適正な工期を定める公正な契約を締結することが求められる。
工期の設定について
公共工事では、公共工事品質確保法第7条第1項第6号において、公共工事に従事 する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、公共工事に従事する者の休日、工事の実施に必要な準備期間、天候その他のやむを得ない事由により工事の 実施が困難であると見込まれる日数等を考慮し、適正な工期を設定することが発注者 の責務とされている。
また、公共工事品質確保法に基づく発注関係事務の運用に関する指針において、建 設資材や労働者確保のため、実工期を柔軟に設定できる余裕期間制度の活用といった 契約上の工夫を行うよう努めることとされており、具体的には、
・発注者が工事の始期を指定する方式(発注者指定方式)
・発注者が示した工事着手期限までの間で受注者が工事の始期を選択する方式(任意着手方式)
・発注者が予め設定した全体工期の内で受注者が工事の始期と終期を決定する方式 (フレックス方式)
があり、余裕期間制度の活用に当たっては、地域の実情や他の工事の進捗状況等を踏 まえて、適切な方式を選択することとされている。
具体的に工期の設定で考慮にいれることは何ですか?
発注者の責務として、工期の設定に当たり、工事の規模及び難易度、地域の実情、自然条件、工事内容、施工条件のほか、次に掲げる事項等を適切に考慮することとされてい る。
・公共工事に従事する者の休日(週休2日に加え、祝日、年末年始及び夏季休暇)
・建設業者が施工に先立って行う、労務・資機材の調達、現地調査、現場事務所の設 置等の準備期間
・工事完成後の自主検査、清掃等を含む後片付け期間・降雨日、降雪・出水期等の作業不能日数
・用地取得や建築確認、道路管理者との調整等、工事着手前に発注者が対応すべき事 項がある場合には、その手続に要する期間過去の同種類似工事において当初の見込 みよりも長い工期を要した実績が多いと認められる場合には、当該工期の実績
年度末に工事が集中するので繰り越して平準化しています
公共工事は、年度初めに工事量が少なくなる一方、年度末に工事量が集中する傾向 があり、公共工事に従事する者の長時間労働や休日の取得しにくさ等につながること が懸念されることから、公共工事品質確保法第7条第1項第5号や入札契約適正化指針において、計画的に発注を行うとともに、工期が一年に満たない公共工事について の繰越明許費・債務負担行為の活用による翌年度にわたる工期の設定など必要な措置を講じることにより、施工時期の平準化を図ることが発注者の責務とされている。
仕様書や設計書に基づいて予定価格を定めること
公共工事では、公共工事品質確保法第7条第1項第1号において、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成され及び確保されるための適正な利潤を確保することができるよう、適切に作成された仕様書及び設計書に基づき、経済社会情勢の変化を勘案し、市場における労務及び資材等の取引価格、健康保険法等の定めるところに より事業主が納付義務を負う保険料等とともに、工期、公共工事の実施の実態等を的 確に反映した積算を行うことにより、予定価格を適正に定めることが発注者の責務とされている。
工期変更について
公共工事においては、公共工事品質確保法第7条第1項第7号や入札契約適正化指 針に基づき、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、 用地取得等、工事着手前に発注者が対応すべき事項に要する手続の期間が超過するなど設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態 が生じた場合、災害の発生などやむを得ない事由が生じた場合その他の場合において 必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更を行うものとされている。
また、工事内容の変更等が必要となり、工事費用や工期に変動が生じた場合には、 施工に必要な費用や工期が適切に確保されるよう、公共工事標準請負契約約款に沿った契約約款に基づき、必要な変更契約を適切に締結するものとし、この場合において、 工期が翌年度にわたることとなったときは、繰越明許費の活用その他の必要な措置を 適切に講ずることとされている。
下請契約における基本的な考え方
建設工事標準下請契約約款では、下請契約において、元請負人は、下請負人に対し、 建設業法及びその他の法令に基づき必要な指示・指導を行い、下請負人はこれに従うこととされている。また、元請負人は、工事を円滑に完成させるため、関連工事との調整 を図り、必要がある場合は、下請負人に対して指示を行うが、工期の変更契約等が生じる場合は、元下間で協議・合意のうえ、工期や請負代金の額を変更することとされている。加えて、下請負人は関連工事の施工者と緊密に連絡協調を図り、元請工事の円滑な 完成に協力することが重要である。
下請契約、特に中小零細企業が多く見られる専門工事業者が締結する下請契約におい ては、多くの場合、注文者が設定する工期に従っているほか、内装工事などの仕上工事、 設備工事は前工程のしわ寄せを受けることが多く、竣工日優先で発注・契約され、納期 が変更・延期されないまま短縮工期となっても費用増が認められない場合がある。また、 工事の繁忙期にあっては急な増員が困難な場合もある。下請契約においては、 元請負人 は、下請負人による 時間外労働規制の遵守を前提とした適切な人員や工期ごとの工期に ついての見積りを尊重して適正な工期を設定する必要がある。また、前工程で工程遅延 が発生した場合には後工程がしわ寄せを受けることのないよう工期を適切に延長すると ともに、竣工日を優先せざるを得ず、工期の延長ができずに工程を短縮せざるを得ない 事情があるときは、元下間で協議・合意のうえ、契約工期内の突貫工事等に必要な掛増 し費用等、適切な変更契約を締結しなればならない。